書体の選び方【欧文編・サンセリフ体】

書体の選び方【欧文編・サンセリフ体】

サンセリフ体

セリフ(ローマン体に見られる飾りの部分)がなく、縦も横も太さが一様な書体をサンセリフ体と呼びます。日本語で言う「ゴシック体」と同じような分類です。

19世紀初頭、産業が発展し広告や商品での文字の役割は「目立つこと」でした。その背景から黒く太く書かれた書体が流行し、登場したのがセリフ体の最後に紹介した『スラブ・セリフ(エジプシャン)』です。

そこからさらに分かりやすさや新しさを求め、セリフをなくした書体が登場し、1830年代あたりから本格的に使用されるようになります。それがサンセリフ体の起源です。

サンセリフ体は年代、形によって4種類に分類できます。

グロテスク・サンセリフ

それまでセリフ体が当たり前だった時代に突然現れたサンセリフ体。奇妙だ、異様だ(grotesque)ということでこう呼ばれるようになったとも言われています。モダン・ローマンやスラブ・セリフから受け継いだ直線的な形が特徴で、サンセリフ体の中では古めかしい印象をしています。「a」や「g」の形にローマン体らしさを残しているのが分かります。

Franklin Gothic(フランクリンゴシック)は1902年にアメリカで誕生した書体で、ドイツで作られたAkzidenz Grotesk(アクチデンツグロテスク)の影響を受けて作られました。しかしながらアメリカらしい無骨さも表現されていて、レトロなデザインにはぴったりな書体です。

リアリスト・サンセリフ

ネオ・グロテスクとも呼ばれます。グロテスク体の誕生から50年程度後の1940年代、タイポグラフィーとグラフィックデザインにスイススタイルが流行した頃に誕生しました。グロテスクと似た要素を持ちつつも、視認性を高めているのが特徴です。

Helvetica(ヘルベチカ)は書体界で最も有名と言っても過言ではない書体です。1957年にスイスで生まれた書体で、その使いやすさ・視認性の高さから空港や高速道路など幅広い場所で使用されています。パナソニックやトヨタのロゴもこの書体ですね。

ジオメトリック・サンセリフ

ジオメトリック・サンセリフはドイツで誕生した書体の種類です。1919年、ドイツに開校した美術学校『バウハウス』では、すべての芸術を建築に統合するという革新的な教育目標のもと、合理主義、機能主義な芸術美を追求していました。ジオメトリック(Geometric、幾何学的)という名前の通り、直線や円などで構成されています。

Futura(フーツラ、フトゥーラ)はそのバウハウスで講師をしていたパウル・レナーによって作られました。丸や直線、三角を基準に作られた書体で、ルイ・ヴィトンやSupremeなど数多くのブランドで使用されています。EとOを比べてみても分かる通り、文字ごとに幅が極端に違うのが特徴です。だからTrajanと同じく、ハイブランドでも負けないような王道感のあるロゴが作れるのですね。

ヒューマニスト・サンセリフ

ドイツでジオメトリックが流行った一方、イギリスでは少し柔らかな人間味のある書体が求められるようになりました。そこで誕生したのがヒューマニストです。飾りの少ないシンプルさは残しつつも、手書きのような柔らかなカーブなど、どこか親しみやすさ感じるような表現をしているのが特徴です。

Gill Sans(ギル・サン)は、1928年にイギリスの書体デザイナー兼彫刻家のエリック・ギルによって作られました。地下鉄で使われる書体として誕生後、イギリスの放送局BBCでも制定書体として企業全体で統一してこの書体が使われています。直線的な表現は前述のFuturaとも同じように見えますが、大文字の『C』や『S』、小文字の『a』や『g』などにローマン体にも共通するような柔らかさが見られます。

まとめ

サンセリフ体はローマン体と比べて、それぞれの違いが分かりづらいかもしれませんが、時代によってやはり形が変化していることがわかります。広告で文字を入れる際は、好きな書体だから選ぶというのも良いとは思いますが、どの書体がしっくりくるのか、吟味しながら選ぶのも楽しいものです。

書体は誕生した背景や作った人のこめた思いを知るだけで見え方や使い方が違ってきます。この記事がデザインの参考になれば幸いです。